その魅力に気付くのに時間を要する音楽がある。
ポール・ギャリコ原作の物語に基づく
Camelの代表作"The Snow Goose"は、
十数年聴いてはいながら
正直、ピンと来ないままであった。
いわゆる「美メロリスナー」的な観点からは
このアルバムはフックのあるメロディが少なく
(じんわりと穏やかで美しい旋律が多い)
BGM的に流れてしまうと思っていた。
その一枚が、とある秋の日、急に響いてきた。
目の前でスノーグースが飛ぶ姿が浮かんできた。
理由は今でも分からない。
折角なので、所有しておきながら
読んでなかった原作を読んでみた。
・・・戦火の中、身体に不自由のある主人公ラヤダーが
傷を負った人々を助けにヨットを漕ぎ出す場面が印象に残った。
「ぼくの力でできることなんだよ。
今度ばかりは、ぼくだって人並みに
自分の役目を果たすことができる」
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自分が思い描いたような人生を歩める人は
一体どれだけいるだろうか?
思いもよらない出来事や、期待とは正反対の航路に
遭遇することは珍しくはないのだろう。
そんな中、たとえ望んではいなくとも、
「自分が必要とされる」場所があるならば、
それを「自分の役目」として位置づけることは
決して間違っていないと思うようにもなった。
私事だが、2015年は怒濤の日々だった。
思いもよらない業務体制となる中、
ただ生きていることに大きな苦労を伴わざる
得ない人が沢山いること、そして、
その為に必要な人・モノ・仕組み等が
まだまだ足りていないことを痛感する日々だった。
少し雑な言い方をすると、
私が音楽を止めても困る人はいないが
私が仕事を辞めたら困る人がいる。
また違う言い方をすると、
世の中には音楽をする人は溢れかえっているが、
相談援助業務をする人は足りていない。
「私がこの世界にいる意味って何?」という、
中二病まっしぐら(笑)な命題を
果てしない激務に追われながら
問い続けた一年だった。
(2016年1/1記)
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